引用の仕方について

引用の仕方ってのは結構みんな判らんものである。実際うちの指導教員も「まあ、そんなんでいいんじゃない」とか言うくらいのものである。幾つか「レポート、論文の書き方」のような本で確認してみてもまちまちである。従って、コレというものはないのかもしれない。分野や専門の違いでも結構違ってくるようだ。そこで、とりあえず文句の言われない引用の仕方についてここに簡単に纏めておきたいと思う。ちなみに、ここの記述を鵜呑みにして恥をかいたり叱られたりしても俺は知らん。

1 引用の仕方
1−1 引用文の示し方

1−1−1 短い場合:本文の中で「」で括る

例)
どのような意見であれ、それを封じるということはJ・S・ミルが「意見の発表を沈黙させることに特有の害悪は、それが人類の利益を奪い取るということなのである。」(J.S.ミル塩尻公明他訳『自由論』岩波文庫、1971年、36頁)というように最大の害悪なのである。

1−1−2 長い場合:前後一行の空白と左右の3文字分くらいの空白を空ける

例)
ショーペンハウアーは主観を以下のように定義し、自分の肉体すらも客観であると言明している。

  全てを認識し、誰からも認識されないもの、これが主観である。従って、
  主観は世界の担い手であり、一切の現象しているの、すなわち一切の客
  観を一貫して常に前提しつつ制約づけている。というのも、ただいつも
  そこにあるものはただ主観とのみあるのである。この主観として誰もが
  自分自身を見いだすのであるが、しかしただいつも彼が認識する限りに
  おいてのみであり、彼が認識の客体である限りにおいてではない。しか
  し、彼の肉体が既に客観であるのであり、それ故我々は彼の肉体すらこ
  の見地から表象と名づけるのである。(Schopenhauer, Die Welt als 
    Wille und Vorstellung, dtv, 1998, S.33)
このように、主観とは凡てを認識するが、それ自体は決して誰からも認識されないものであり、自らの肉体すら・・・

1−2 一部省略

引用文の一部を省略する際には〔〕の中に「中略」あるいは「・・・」を入れる。

例)

  水辺を通って子供の水に溺れるを見るとする。自分はこれを救い得るか
  も知れない。併し自分は自分の体のために疑念を生ずる。そのために自
  分は子供の溺れるに任せておく。もう一つの場合には自分は水中に飛び
  込む。そうして自分の生命の危険を冒して子供を救い上げる。自分は子
  供を救ってその親に返し与えるためにそれをするのである。第一の場合
  に自分は疑いもなく利己主義者である。併し第二の場合にもまたそうで
  あるか。〔中略〕何故に汝は水中に飛び込んだか。疑いもなく、子供を
  救うという観念が子供を溺れさせて置くと言う観念よりも高い程度に於
  いて汝を満足させたからであろう。(阿部次郎『倫理学の根本問題』岩
  波書店、1916年、10頁)

1−3 段落省略

引用文にある段落を省略する場合、特に詩歌などの場合によく多用するが、こういう場合には、「/」(スラッシュ)を用いる。

例)
私の好きな中原中也の詩の一節にこういうものがある。「昔、私は思つてゐたものだつた/恋愛詩なぞ愚劣なものだと/今私は恋愛詩を詠み/甲斐あることに思ふのだ」(大岡昇平編『中原中也詩集』岩波文庫、1981年、132頁)。私自身も若かりし頃は中也と同じように考えていたものである。

1−4 補足説明

引用文の最中に指示代名詞などの内訳を示したり自分の説明を加えたりする場合には、()を用いる。既に()が引用文中にある場合は〔〕をなどを用いる。

例)
カントが義務を次のように定義している。「この法則〔道徳法則〕に従って、傾向性からの一切の規定根拠を排除することによって客観的に実践的である行為が、義務と呼ばれる」(Kant, KpV, Shurkamp, 1974, S.202)。そして、こうした義務は・・・

2 引用文献の表記の仕方
2−1 単行本

著者名(翻訳者名)『書名』出版社、出版年、引用頁

例)
E・レヴィナス、合田正人訳『存在の彼方へ』講談社学術文庫、1999年、313頁
小倉志祥『カントの倫理思想』東京大学出版会、1972年、250頁
H.J.Paton, The Categorical Imperative, University of Pennsylvania Press,1971,pp.80-82

2−2 雑誌論文

著者名「論文名」発行機関名『雑誌名』巻(号)、発行年、引用頁

例)
舟場保之「カントにおける啓蒙とコミュニケーション論の可能性」日本哲学会編『哲学』第44集、1994年、195頁
H.J.Paton,"An alleged Right to Lie - A Problem in Kantian Ethics" Kant-Studien, Bd.45.1953,S.191





主な参考文献
小笠原喜康『大学生のためのレポート・論文術』講談社現代新書、2002年